SIRC 龍谷大学 社会的孤立回復支援研究センター | Social Isolation Recovery Supports Research Center, Ryukoku University

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ともに新型コロナで亡くなられた方を追悼し想いをわかちあう

 2022102日、社会的孤立回復支援研究センター長の黒川雅代子教授(本学短期大学部)が副実行委員長として参画する「りんどうの会」が、融通念佛宗総本山大念佛寺(大阪市平野区)で開催されました。りんどうの会は、新型コロナウイルス感染症により、大切な人を亡くした方や看護、介護にあたられた看護職・福祉職の方が集い、亡くなられた方を追悼するとともに、想いをわかちあうための会です。

▼イベント実施概要はこちら

https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-11022.html

▼龍谷大学ホームページ「News」

https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-11491.html

 同会で「喪失に向き合うために」と題し、黒川センター長が講演を行いました。

「新型コロナウイルスは、遺族から大切な人だけではなく、闘病中の看病、大切な人に別れを告げる、葬儀などの儀式を奪いました。そして、医療・福祉従事者にとっては、患者さんのそばにいる時間や家族へのケアの時間が感染予防のために制限されました。コロナによって奪われたそれぞれの空白を埋めるために、今日は、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方を追悼し、遺族と医療・福祉従事者がともに亡くなられた方への想いをわかちあう集いにしたいと思います。大切な人を亡くしたあとに起こる心身の不調は自然な反応です。同じような体験をした人とわかちあうことで喪失への向き合い方に一筋の光が見えるかもしれません。

 ウイルスによってコントロールされ思うようなケアが提供でない、感染対策や勤務交代など日々の仕事に忙殺されるなど、医療・福祉従事者が経験している状況を、あいまいな喪失と名付けられるかもしれません。あいまいな喪失とは、はっきりしないまま、解決することも、終結することもない喪失のことをいいます[1]。あいまいな喪失は喪失そのものがはっきりしないので、自分でもわからない中で、モヤモヤしたり、混沌とした感情になったりします。そのような状況に「あいまいな喪失」と名前をつけてみる、コントロールできないことを無理にコントロールしようとしない、無理に白黒つけようとしないなどの対処をしてみることを提唱者のBossは推奨しています。」

黒川雅代子センター長による講演の様子
会場では追悼式(仏式)が執り行われました

 講演後は、複数のグループに分かれて、参加者同士のわかちあいが行われました。わかちあいは、遺族と医療・福祉従事者だけのクローズドで行われました。

当センターでは、様々な要因で生起する「社会的孤立」を研究対象としています。個々の孤独から社会的孤立に至るメカニズムの解明や、回復のための理論仮説の検証、支援ネットワークの構築などに引き続き取り組んでいきます。

 なお、この会の様子は、メディアでも紹介されました。詳細は、NHKウェブサイト「新型コロナで亡くなった人を悼む 大阪市の寺で追悼式」をご参照ください。

[1] Pauline Boss, Loss, Trauma, And Resilience: Therapeutic Work With Ambiguous Loss  (2006).